渡辺貞夫 BRAZILIAN LOUNGE at 八ヶ岳高原音楽堂 | 2026.07.12. Sun
幼少のころ、訳もなく「カッコいい大人」と最初に思った人が二人いて、
ひとりは名優・仲代達矢。
新聞の全面広告(ウィスキーか何かだったような)コントラストのあるポートレート。
そしてもうひとり。音楽家・渡辺貞夫。
スクーターのCM、日本人離れした軽快な佇まいと満面の笑顔。
小学校入ったばかりの頃で、そりゃシブすぎるだろう。
我ながら、不思議。
のちに知ることになる、黒澤や小林正樹、岡本喜八といった日本映画、
モダンジャズ・ブラジル音楽・フュージョン・ブラックコンテンポラリーという音楽。
まだ何も知らなかったころだけに、
この時にどこか、原体験的なところにスッポリ入ったのかもしれない。
ちなみにそのCM、記憶の中では「ハハハ、ゴキゲンだね」ってセリフだったんだけど、
YouTubeで見てみたら「いいでしょ、コレ」って言ってるな・・・。
全然違う(笑)。
「ゴキゲン」はナベサダさんのワードだけに、どこかで記憶が混ざったのかな。
その渡辺貞夫さんを、初めて聴きに行く。
BRAZILIAN LOUNGEツアー、2026.07.12.Sun 最終日公演。
場所は八ヶ岳高原音楽堂という、これ以上はありえない最高の環境。
森を眺めながら、一行早めの到着。
と、なんと会場前でリラックスしたニコニコ顔の貞夫さん。
えぇ?ライブ前なのに?いきなり度肝抜かれました。
メンバーは、
渡辺貞夫 Alto Sax
小野塚晃 Piano
マルセロ木村 Guitar & Vocal
三嶋大輝 Bass
竹村一哲 Drums
という布陣。
さっと袖から出てきて、吹きながらステージ中央へむかう渡辺さん。
有機的にシンクロしていく奏者たち。
音楽堂の音廻りを活かした、生音主体の音の粒立ち。
(アンプは最小限のバランス)
のっけからサンバのグルーヴで、
どこまでも澄んで溌剌とした、明瞭なアルト。
歌心とリズムの感覚。
ナベサダさんの音世界は、何故か不思議と、
複雑な展開や高度な技術、実験的な表現であったとしても、
耳にスッと入ってくる。
エレクトリックジャズの前衛的なインタープレイやってても、
チャーリーパーカーのビバップでも、
サンバカンソンやアフリカンチャント、
AORな歌伴ソロでも、
どこにいても、誰とやっても、スッと入ってくる。
そして現在、93歳という事実。
今も、これからも、全盛期は続行中なんだ。
言葉にならない。
もちろん、カルフォルニアシャワーやマイディアライフ、
ロバータフラッグやブレンダラッセルとの共作、大ヒットの時代。
いやしかし、近作の方がむしろ、良いんですよ。
2000年代以降、編成はアコースティック主体になり、
音像がハッキリして、レコーディングやマスタリングの仕上がり具合も上々。
そしてなんといってもナベサダさんの音の流麗さが洗練の極みをもって、
優しい。とにかく。
楽器というものがその人そのものになり、弛まぬ研鑽が進化と深化を止めない。
もはや世界のどこにも見当たらない、孤高のマイスターで真の芸術家。
ファンキーなバッパーであり、唯一無二のメロディアスなスタイリスト。
ブラジル音楽との相性がやっぱり素晴らしくて、
竹村さんの手数の多いドラム(最高)がグルーヴするサンバに、
バンド全体が乗る中、歌うアルトが若き奏者たちを引っ張る。
全員の音をよく聴き、リードを頻繁に微調整しながら、
バンドをまとめ上げて行く推進力。
シリアスとユーモア。
熱い演奏の合間、肩の力の抜けたMC、お茶目な落差も楽しい。
バーデンパウエルやエリスレジーナ、ヴィニシウスモライスら、
ブラジルの音楽家たちとの逸話がまたすごく・・・。
(エリスとの共演、聴きたかったなあ。)
75年に渡るという、音楽の旅路は、
音盤上だけでも途方も無い化学反応の連続で、
ここで並べ立てると日が暮れそうなのでやめますが、
幾多の素晴らしいプレーヤーたちとの共演、
アメリカの音楽が好きなものとしては、今更ながら発見があり驚きがあり、
ブラジル音楽のテイストも、
ジャズもロックもブラックミュージックも、となると、広大な旅路を再発見。
二部構成の計2時間みっちり19曲、確かな足取りで立ち続ける。
おそらくここに座る聴衆の誰よりも、年長者。
授かりし音。
その長い道のりの一端に触れる。
当日のセットリスト
ジャケ写が良いと中身も良い、という法則。
左:Bird of Paradise (1979) | P.Hank Jones B.Ron Carter Ds.Tony Williams
Cover Photo by Kazumi Kurigami
右:But Beautiful (2026) | P.Russell Ferrante B.Ben Williams Ds.Ittetsu Takemura
Cover Photo by Sadao Watanabe
コロナ禍以降、
行き詰まりと閉塞感、
久しく離れてしまった様々な事柄を、
少し、押し戻す力を与えてもらったような。
心から楽しむことの大切さを、
吹く背中が見せてくれたような。
渡辺さん、ありがとう。
カッコいい大人にはなれなかったけど、
自分ももうちょっと、頑張ってみたい。
















































